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「売れる書籍の作り方セミナー特別編」カリスマブックバイヤーと気鋭の出版社による本を売るための最新現場ノウハウ

2014年4月2日

売れる書籍の作り方セミナー

11人しか知らない本を書いて売りたい人のための最前線情報

この記事は、2014年2月15日にインフォトップ主催による
「売れる書籍の作り方セミナー特別編」@渋谷に参加して
その要点を私なりに整理したものとなります。

本の出版(紙・電子書籍とも)を検討されている方にとって
多少なりともご参考になればと思います。

実は以前、こちらの記事でお伝えした後さぼっていたのですが
複数のメルマガ読者様から再三のプッシュ(=はよ、書けや!)
をいただき情報が生きているうちに一気にまとめる決心をした次第です。

紀伊國屋書店や三省堂書店に無名の個人が出版した本を平積みにしてもらう方法

さて、まず大雑把にセミナーの概要や状況をお話ししますと・・・

渋谷の、20名も入ればいっぱいという某会議室が会場でして、
集まったのは積もった雪が溶けない、
とても寒い土曜の午後にも関わらず11名の男女。
(12名だったかもしれませんが、男性6名、女性5名だったように
記憶しています)

セミナーの名称は;
<<特別セミナー>>売れる書籍の作り方セミナー特別編
『書籍を売る為にどうするか?』

セミナー講師は、ブックラボラトリーズ代表の関谷雅彦さん
カクワークス代表の福永成秀さん

関谷さんは、20年以上に渡り、「紀伊國屋書店新宿本店」「ブックファースト渋谷店」
「TSUTAYA代官山店」などで仕入れ総括や新店立ち上げなどを歴任されてきた
いわばカリスマブックバイヤーです。
要は、書店仕入担当者しか知らない現場ノウハウをお持ちの方。

福永さんは、気鋭の出版社として全国のローカル新聞社や有名書店との
つながりを発揮して、個人レベルで可能な著書出版による顧客獲得ノウハウを
惜しみなく開示してくれました。

いずれも最前線の現場で活躍する方々であり、
出版に関して生の情報を知ることのできる滅多にないチャンス
だと考え私は参加を即決めました。

なおセミナーコンテンツの配布資料はなしで、口頭による説明とQ/Aのみです。

以下この記事でご説明する話は、講師の方々の口頭説明
(一部ホワイトボード使用)をもとにして
KENBOというフィルターを通した二次情報ということになります。

私はセミナーの間、ずっとペンを走らせメモを取り続け、
講師の言葉だけではなく、意図をくみとって記事化したつもりですが
正確さを欠き、誤った解釈をしている可能性もあります。

これらはすべて私の未熟さによるものです。
またこの記事中に多用している「見出し」のほとんどは
講師のそのものの言葉というより、私の解釈によって
勝手につけたものですので合わせてご了承願います。

ところでこのセミナー・・・
なぜインフォトップが主催なのか?10名程度の募集ながら
なぜ私に案内の声がかかったのかは未だ謎です(笑)

作家は営業マンでもあらねばならないという現実を知る

最初の講師は関谷さんです。
いきなり、何の話だろうと思っていたら、本屋に売り込み
かけるためのマインドセットなようなものでびっくりでした。

本屋に売り込みをかけるためのキーワード

セミナー参加者は例外なく同じように感じたのではないでしょうか。
本を書く話ではなく、作った本をいかに売り込むかという話で
営業マインドを前提として話が進められました。

売る キーワード

これによると、キーワードがいくつかあり;

・そもそも町の書店というのは減っている事実を知り、
・書店のある立地場所を研究する(○○沿線上のどこかとか)
・その書店の競合店はどういったところにあるかを押さえる
・その書店のもつイメージを膨らませる
・書店は日、月、年のサイクルで動くことを知る

町の書店が減っているのは、最近実感として
私の住んでいる街でも、小さな本屋さんは軒並み廃業している
ことから頷けます。

続く書店の立地場所、その書店の競合店、その書店のイメージ
とはどういう意味かといいますと、
あなたが狙う、売り込みをかけたい本屋さんについて
情報を集めましょうよ、ということになります。

まぁこれこそ営業マインドそのものですね。
どんな世界でも攻める相手の情報を持たずにぶつかっていくのは
無策というか無謀であり、非常に効率が悪いです。

狙う書店とは、自分の本を置いてもらいたい書店のことです。
狙う書店はどういったジャンルの本に強いかとか、
その書店は競合店の何を脅威と感じているかとか、
その書店何を自身の弱点と考えていそうかとか、
・・・そういったことについて想像を膨らませ
あなたがご自分の本をもっていった際に
売り込む切り口として使うための戦略の話です。

狙う書店のニーズと、あなたの売り込みたい本が
マッチしていれば置いてもらえる可能性が
激高になるということですね。

最後の「日、月、年のサイクルで動く」という話の補足です。

日というサイクルでは、書店は夕方になると在庫が気になりだすので
一般的に売り込みは午前中のほうが良い。

月というサイクルでは、書店は月の半ばあたりからアピールしたい
ものが欲しくなる。

年というサイクルでは、例えば1月にはバレンタインに関係した本を
揃え、3月から4月にかけては自己啓発が売れる。

自分が作る本がどういったサイクルに位置づけられる
のかを意識しておくほうが良い、というお話でした。

書店が気にする「返品率40%」というキーワード

返品率40%というのは、ギョーカイにいる人なら
通じるキーワードであるということです。

つまり10冊本を作ったら、6冊売れて、4冊は返品される。
この40%を超えられるかどうかがポイントというか
本屋さんの判断基準のようです。

ここでの教えは、40%という数字を出して交渉するという
ことでした。

なぜ数字を出すのがよいかというと、本屋さんから
「この人は本のことをよく知っている」
と思われるため。

全くの素人同然の顔で売り込みをかけるのではなく、
きちんとギョーカイの常識というものを
わきまえていますよ?というシグナルを発信することで
交渉しやすくなるという教えでした。

売れる本のための店舗リサーチ

まず自分の本が書店に置かれたときのことを想定します。
本には必ずジャンルというものがあり、たいていは
ジャンルごとに置かれている場所が異なりますね。

関谷さんは自分の作る本のジャンルを想定し、
実店舗をリサーチするということを勧めていました。

具体的にはそのジャンルの置かれている棚をウォッチします。
白っぽい本が多いか、黒っぽい本が多いかとか、
文字が多い本が多いか、写真や絵が多い本が多いかとかです。
・・・見当をつけたら、その逆をいく本のほうが
目を惹きやすいということです。

他にもアドバイスがあってまとめるとこうなります。

・同じジャンルで棚に置いてある本と逆を狙う
・汚れが目立ちにくい本が長く置かれる傾向にある
・帯があるほうが選ばれやすい

手書きPOPを持っていく

手書きPOP

手書きのPOP、これを自作して交渉するとよいとのことです。

ただ書店によるので、これも事前調査のうえで。

一般的には自分の本だけではなく、手書きポップを持参して
乗り込んでいくと書店の対応もよいということです。

そりゃそうですね、やはり意気込みというか情熱が
感じられますしね、この人は本気なんだとそれだけで
わかるというもの。

平台と平積を狙え

平積

書店で狙う場所というのは、棚ではなく
平台でありそこに平積されることを目標としましょう!
という話です。

例えば、あるジャンルの平台に5冊ないし6冊が積まれているとして
残り2冊ないし3冊くらいになると、追加発注されるということです。
この本、売れてるなと判断されるようです。

さらにおまけがあって今の時代、一軒の書店で売れている情報は
オンラインで他の書店もわかるので、売れてる本なら
入荷して置こうと発注がバズるようです。

電子書籍と紙の本

電子書籍について、販売開始から一定期間「無料にする」
という作戦です。

これは私も実感してまして、Amazon Kindleで販売開始直後は
タダがよいというアドバイスを受けて、そうしたところ
ダウンロード数は確かに跳ね上がります。

関谷さんのお話では、電子書籍の無料販売によって購入者があとで
「紙の本」を欲しがる人も意外と多いとのことです。

まぁこのお話はあれです、紙の本と電子の本とが
無関係ではなく連動している点もあるので、
うまく噛み合わせて販促ツールに
仕立てあげられるということでしょうね。

大きな書店を狙うべし

さて書店に売り込むと聞いただけでビビッてしまう方が
多いと思います。

私もそうです。
関谷さんは、ただでさえ素人がビビッてしまいそうな本屋さんへの
ダイレクトな売り込みについて、どうせやるなら
名のある大きな書店がよいと断言されていました。
三省堂とか紀伊国屋とか、です。

えっ!大きな書店?
さらにビビッてしまうところです。
だって、自分の本を担いで訪問しても全く相手にされない
のがオチだとついつい考えてしまいませんか?

そう思っていた矢先に、セミナー受講者のひとりが
私が思っていたとおりのことを質問しました。

そうしたところ、関谷さん曰く;
大きな書店の店長は意外とヒマ?というか
店長は奥に引っ込んでいるのが普通だということです。

そして、自分で書いたものを自分で持っていくということに
対しては基本的に歓迎されるもの。
なぜなら、そこにはその本の本当のウリになるものが何かとか
知ることができるから。

そして後ほど紹介する出版業界の実態でお分かりいただけると
思いますが、今やどの書店も生き残りを賭けた
差別化に必死なのです。

そういった意味でも大きな有名書店への売り込みは
かなり現実的な方法であると主張されているわけです。

だから、手書きPOP以外にも、ゲラ(A4)を販売2か月前くらいに
持っていくとよいとの話。
書店は事前情報には基本ウェルカムなのです、差別化にもなるし。

因みに、百田尚樹さん勝間和代さんも当初は書店回り
をされていたとのこと。

これだけの有名人であってもスタートは一緒なのですね。
ということだけで凡人の私にも何か勇気が湧いてきます。

出版業界の実態とこれからの売れる本の作り方

ここから以降、講師は福永さんにバトンタッチです。

出版業界は縮小し続けている

確かに大きくなっているような感じはしませんが、具体的には;

本のビジネス(紙の本):10年前は1兆円 ⇒ 現在は8500億円
書店の数       :2万店 ⇒ 1.5万店
発行された本     :6万点 ⇒ 8.5万点

という話でこれ、本が出版された数は増え続けているにも関わらず
市場全体が縮小し、全体としては以前より儲からないビジネスに
なってきていると読めばいいのでしょう。

書店が本の売れ方に敏感なわけ

まずはこちらの図。
ひとつのモデルに過ぎませんが、出版社から本が出て、
それが読者(購入者)に届くまでの間、本の売上のうち
取り分がどう分配されているかといったものです。

本の利益

こういった関係にあって、出版社と取次店の間の関係を
さらに深くみると、『昔は』本が売れようが売れまいが
とりあえず出版しておけば作った分をお金に換えることが
できたという仕組みだったようです。

その『昔は』がいつの時代かは聞き忘れましたが、ともかく
今はこういった考え方が使えないという環境にあるとのこと。

今はむしろ、取次店から返品されると、返品した分の
請求が出版社に来る時代だということです。
問題は、まだ作った本を一旦取次店に納品し、その分の
お金を受け取っていないにも関わらず、返品分の
請求が来る
ということです。

それくらい回転が速くなっているのですねぇ。

これを取次店と書店との間でみると、書店の側からすると
納品されたら検収期間までが非常に短いため、
返品する場合はもたもたせずすぐに返品しないと
大損をこく、という事態になりかねません。

だからこそなのです。
書店が本の売れ行きに異常に敏感になるのは。
待ったなしで売れそうかどうか判断しないといけないのですね。

今の時代のベストセラーとは

初版というのは、例えば3000部くらいしか作らないでいて、
その先10000部売れたらもうベストセラーといってよいそうです。

何分にもサイクルが速い世界で、リスクを低減させバッと売るために
どうするかというと、本を作る段階からメディアと連携するのが
当たり前のようです。

最初から、これで売れるよね!という状態を作っておくのが
今の出版業界。

本を名刺代わりにする発想

ここまでご説明したように、本を作るのも普通せいぜい3000部です。
ここで印税を1冊あたり300円として、1000部売れたら・・・
それでも30万円です。

頑張ってそういったレベルですので、本というのは
多少売れたところで大した利益にはならない、ということです。

そこでどうするかというと、本を名刺代わり、宣伝ツール
として扱うという発想が大事であるとのことです。

つまり、バックエンドを用意する。
具体的には、本を買ってくれた人に限定のサービスなどを
HPやBlogで紹介していくといった流れを作る。

こうなるためには、口コミ(バズ)が欠かせません。

福永さんのお話では、今はfacebookとかだけでは
アカウントパワーも弱まってきていて
むしろ、本の内容といかに露出させるかが口コミを
誘発するポイントになると。

本の内容とは、例えば読者を想定して、読者の気持ちを
タイトルにする。
装丁、帯、POP、目次などに気を配るということ。
(因みにPOPや帯は出版社が作るもの)

人はどこで本を買うか

書店店頭     :50%
新聞・雑誌    :30%
インターネット  :10%
その他      :10%

こうなっているようです、購入する場です。

書店店頭では、平積、面出しへの努力が欠かせない、
ネットではAmazonと楽天で扱ってもらう、
新聞が曲者でして、実は地方新聞がねらい目だそうです。

ここで強い口調でひとことあったのをしっかりメモしました。

口コミを発生させるには、露出されなければならない

という原則です。
そしてこのように追加されました。

ほっておけば売れるということはあり得ない。

・・・やはり営業マンであらねばならないということになります。

プリントオンデマンド

ひとつの賢いアプローチとして、オンデマンド型の印刷を
紹介されていました。

Amazonでいうなら、市川にプリントオンデマンド工場がありまして
そこにリクエストが入ると、印刷され発送されるというもの。

実物をご覧いただくとすぐにわかりますが、書店に置いてあるものと
違って装丁はシンプル、紙の質も低価格版といった感じで
海外モノのペーパーバックといったつくりに近い感じです。

それでも立派な本であることには違いありません。
しかも過剰在庫を持たず200冊とか小さな規模で準備できるのも
なかなか魅力的です。

因みに福永さんの会社では、こういったオンデマンド型の印刷だけではなく
それを有力な地方新聞に紹介し、さらに有名どころの書店(三省堂書店とか
紀伊國屋書店)の30店舗くらいに置くといったプランなんかを
用意されているようです。

今、150冊のあなたの本があったとして、これを小さな書店に
1冊ずつ150店舗に置いてもらうよりも、名のある大きな書店30店舗に
5冊ずつ置いてもらうほうがはるかに効率的であるという
理由から現場を知る人だからこそのユニークなプランですね。

本の部数には情報格差がある

よく発行部数○万部!とかありますが、本のカウントには
次のようなものがあるようです。

公称部数 :一般に言われる部数がこれのようですが、根拠がないとのこと
刷り部数 :印刷部数です
実売部数 :本当はこれが大事なのですが、なかなか正体が見えない

といったことで、部数という言葉にこれだけの情報格差があるとは驚きです。

惑わされず本質をみましょうね!という理解をしました。

・・・長々となりましたが、巷に溢れているわけでない出版業界の
裏事情いかがでしたでしょうか?

自己出版について少しは勇気が出てきませんか?