私がとても尊敬しているエンジニアであり起業家である
中島聡さんのレポートを読んで大変腑に落ちたというか、
まったく同感だと思えた話があり、ここで共有させていただきます。
この話は中島聡さんが「消費者保護という観点からのWeb3」というテーマで、
消費者庁からヒアリングを受け、その要旨を整理してくれたことが出発点となっています。
Web3の搾取ビジネス
中島聡さんの話を、KENBOなりに注釈を加えてまとめ直すと次のようになります。
中島聡さんのコメント要旨
- Web3(*注1)の世界にエンジニアとしてどっぷり浸かってみたところ、そこのビジネスモデルはことごとく消費者の「楽して儲けたい」欲望を利用した搾取ビジネスばかりだった。
- ガクトがファンに「絶対に儲かる」と宣伝して売りまくって大損をさせたスピンドル(*注2)の事例は、行政として再発を防止すべき。
- Play2Earn(*注3)のような、消費者の「楽をしてお金を儲けたい」という欲望を活用したビジネスが、既存の法律に照らし合わせて違法性があるかどうかなどと悠長なことを言っていては、消費者は守れない。
- 消費者を守るための方法として「消費者のリテラシーを高める」という考えは、行政としての責任放棄であり、決してしてはいけない。無知な消費者を守るのが行政の役割。
- ブロックチェーン・ゲーム業界を健全にしたいのであれば、「遊んで儲かる」部分を100%排除すべき。その排除無くして、消費者の搾取は無くせない。
少々端折っていますが、(*注1)~(*注3)について補足します。
Web3(Web3.0)
Web3またはWeb3.0と呼ばれますが、ブロックチェーン技術を採用した
分散型インターネット技術のことです。
ここでブロックチェーンは聞いたことあるけど、
分散型?・・・はぁ?
となるのがほとんどではないかと思います。
分散型インターネットはWeb3.0の特徴ですが、3.0というからには
その前に2.0があり、1.0もありました。
Web1.0とはWebサイトが中心になり、ユーザがそのHPなりブログなりに訪問する形で
情報の流れが基本的には一方通行です。
Web2.0とはYouTubeをはじめとするSNSなど、情報が双方向となります。
Webサイトでもコメントのやりとりはありますが、Web2.0では画像、動画中心の世界です。
ここではプラットフォーマーが総元締めであり、情報を独占しています。
Web3.0では分散型と呼ばれ(それ以前のものは中央集権型)、管理者がいません。
個人がデータを管理しブロックチェーン技術でデータを分散化します。
ではブロックチェーン技術とは?
簡単に言うと、ネットワーク上の端末同士をダイレクトに接続し、
暗号を用いて処理したり記録したりする一種のデータベース技術のことです。
この技術によりセキュリティ面では向上するものの、
法的な整備が行われていない面があって、尚且つトラブルは自己責任になります。
Web3.0の良い面だけを見て、「楽して儲けたい」人々を煽り
そういった人々は単に搾取されている、そういうビジネスモデルしかない
というのが中島さんの主張です。
スピンドル
スピンドルはガクトコインとも呼ばれていますね。
2018年に世間で大騒ぎしていたのを思い出しました。
スピンドルは、芸能人のGACKT氏がプロジェクトに関わっていた仮想通貨の一種です。
私KENBOは、仮想通貨については門外漢で正直なところ関心が無いのでここで止めます。
気になる方は検索してみてくださいね。
Play2Earn
Play2Earnは、Play To Earnのことで、P2Eとも称しています。
ゲームでプレイしながらお金を稼ぐという考え方ですが、まぁこれこそ
「楽して稼ぐ」ことをそのまま表現していますね。
ブロックチェーン技術を使っています。
私は中島聡さんの意見に賛成です。
P2Eで「楽して稼ぐ」ことが浸透すると、それだけで
悪用する輩や集団が表れてくることが予想でき、ケチがつきます。
「楽して稼げる」ものは失ったら「何も残らない」
中島聡さんのメッセージを見て、その通りだなぁ~と思ったのは
きっと私だけではないでしょう。
私が中島さんの意見をそのまま受け入れているのは、
彼が根っからのエンジニアであるという面もあります。
一般的にどんな企業のプログラマー、システムエンジニアも
年齢があがるにつれ現場で手を動かすことをやめ、マネジメントなどにシフトし
コードを作れる人はどんどん減ってきます。
(かくいう私もそれに漏れません)
ところが中島さんは、今でもバリバリのエンジニアなのですね。
ChatGPTの最近のAPIリリース(機能が格段に上がった)もコードを
書ける人だからこそ、その中の最も重要なことを指摘できます。
例えば、
128Kのコンテキスト・ウィンドウをサポートするGPT4-Turboの話
function callの改良
seedを使った、より安定したアウトプット
2023年4月までの知識(これまでGPT4は2021年9月までのデータを学習どまりでした)
Assistant API:いわゆる「AIエージェント」を作りやすくするAPIのこと
Multi-modal
等々、これ以外にもあるのですが、こういった話はChatGPTの
API(Application Programming Interface)を通じて何かを開発する
エンジニアや企業以外には何のことかピンと来ないはずです。
しかしここにこそ本当に重要なChatGPT仕様のアップデートがあって、
だからこそChatGPTが独走でトップを走っているのです。
こういう風に
テクノロジーを詳細に、また客観的に見て説明することのできる技術者は信じられる
というのが私のこれまでの企業人としての認識です。
さて・・・
ここで仮想通貨、FX、バイナリーといったような
投資をして見返りとして利益を期待する話はつまるところ、
『楽して稼ぎたい。しかもできるだけ早く』
という欲望に刺さり、刺激します。
一方で、自分が提供できる価値をコツコツと作り、形にして
ユーザの共感やニーズを満たすことを狙ったコンテンツを軸にしたビジネスでは
提供側は決して楽とは言えません。
勉強、調査、分析、整理などを繰り返して形にしていくわけですが、
例えばKindle出版、コンテンツ販売やアフィリエイト、
再生回数頼みのYouTubeアドセンス広告収入も例外ではありません。
即金で楽して、の代わりに地道な下調べやら作り込みやらなんやらで
結構な労力と時間がかかるのが普通です。
楽して稼ぐためにとにかく投資して見返りを期待するか、
それとも自分が出せるアウトプットに力を注いでファンを作るか、
どちらを選ぶか?
ここで言いたいことは単純です。
仮想通貨、FX、バイナリーなどで損をした場合、
最終的にあなたになにか残るものがありますか?
お金を失ったあなたに、それ以外で
何か将来活かせる何かが残るでしょうか?
Kindle書籍、ブログ、YouTube、アフィリエイトサイトなど
作り提供(開示)することに多大なエネルギーを要します。
その代わり、それらを介してすぐにお金になるかならないかはともかく、
それらはあなたの資産であり、その先に活かせます。
つまり、コンテンツは残るのです。
残るだけではなく、それらを資産として再活用できます。
人は誰かを評価する場合に、その人の頭の中を覗けないので
アウトプットを見て評価します。
世の中は、誰かの生み出したアウトプットによってその人が評価されることを
あなたも無数に見かけ、ご存じであるはずに違いありません。
そのアウトプットが残るビジネスなのか?
何も残らないビジネスなのか?
こういった点で決定的な違いがあると思っております。