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「SEO壊滅」がAI検索とAIオーバービューで進んでいる事実とAIオートファジー

AIがまったく不人気だった2010年代初頭から開発業務に長年関わっていると、逆に中にいるがゆえに
テクノロジーがもたらす世の中の大きな変化に反応が鈍くなってしまうことに気づきます。

ごく最近、英フィナンシャル・タイムズの記事、国内メディアであるNewsPicksにて
ほぼ同時にAIがSEOの終焉に関わっている事実を見て大変驚きました。

『SEOで稼ぐ』ことを生業にされている方は特に注意が必要です。
いやいやそんな兆候は無い、今でも儲かっているから、という御仁もいらっしゃるでしょうけど
例えば普通の物販アフィリエイト、アドセンスなどはいよいよ極端に難しくなると想像します。

今30年に一度の変化点にいて、歴史的にこの手の変化は必ず欧米(ほぼアメリカ)から押し寄せてきました。
SEOの終焉予兆の中で何が起こっているのか、どうなりそうなのか、なにか手を打てることはあるのか
を考えてみたいと思います。

米Hubspot(ハブスポット)が示すSEO流入が「80%ダウン」の衝撃

Hubspot(ハブスポット)のブログは、世界的に有名な
「コンテンツ・マーケティング」の牽引者であると同時に権威としても知られています。

2025年早々に、Hubpostのマネジャーが恐るべき発表をしました。
ブログへのトラフィックが80%激減しているという話でした。

つまり従来のSEOによるアクセスが劇的に消滅しつつある現象を報告したのです。

NewsPicks記事より引用

今までのマーケティング主流でもあるSEOが利かない。。。
恐るべき状況です。

同じような内容が英フィナンシャル・タイムズの記事でも出ていました。
Google検索からAI検索へ移行している事実を解説しています。
(なお下記の記事閲覧はFINANCIAL TIMESで有料申込必要です)

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Brands target AI chatbots as users switch from Google search

Ad agencies adopt new strategies to ensure clients appear in results produced by OpenAI’s ChatGPT an ...

www.ft.com

Hubpostはこのようにコメントしています。

AI search and AI overviews have changed everything.
(AI検索とAIオーバービューがすべてを変えた)

「AI検索」とは、ChatGPTやPerplexityなどの生成AI利用による検索のこと。
「AIオーバービュー」とは、Googleが検索結果に代わり「AIによる概要」という要約をトップ表示させる機能です。

要するに、AI検索とAIオーバービューでほぼ事足りており、
わざわざ検索エンジンを使って今までのように調べものをする、
という習慣がどんどん減ってきているのが現状だということです。

Googleが「AIオーバービュー」機能を載せたことは、SEOを飯のタネにしてきた人が
裏切り
だと叫ぶケースもあるようですが的外れであり、ニーズに即した時代の変化ですね。

先のNewsPicks記事のコメントで、MarketingBrains社のデスーザ・リッキー氏は
「健全な淘汰」であると喝破していますが同感です。
特に、検索はするけど、嫌い。広告もうざいし、そもそも役に立たない情報が多すぎる
と感じている(ほとんどの)人にとって。

デスーザ・リッキー氏は続いて『楽して稼げる』代表格のSEOアフィリエイトについてもコメントしています。
(実際にはSEOアフィリエイトサイトも生成AIアウトプットを貼り付けるなどでは無意味で、
 キーワードをしっかり研究しそれなりに濃い記事が必要なので、
 現実にはここ何年もそうですが『楽して稼げる』わけでは決してありません)

そもそもSEOとは発信者側にとっても「目的ではなく手段」のはず。
企業が「SEO対策をしたい」と言っても、突き詰めれば「売上を上げるための手段」に他なりません。
「SEO対策のプロ」などが出てくるのもおかしな話で、SEOの本質を理解しているのはプラットフォーマーの「ごく一部の人間のみ」で、「正解」は誰も知らず日々変わっているのです。

まことにその通りだと実感します。

「SEO対策のプロ」とは本質的にGoogle内部で検索エンジンを構築する一部のエンジニアしかいないはず。
アフィリエイトでSEOプロ、SEOコンサルを自認していても、現象面から遡って
「こうすれば上位に露出できた」ことを都度探しているに過ぎないのです。

よって検索エンジン設計者以外に本当の意味でのSEOプロはいません。

SEO対策のプロ、SEO対策コンサルを謳い文句にしている人は
単にブラックボックスを手探りしているだけなのです。
この奇妙な言葉に惑わされないように注意したほうが良いです。

普通の物販系ではこの先、逃げ道はどんどん閉ざされると思います。
ただしばらく逃げ道というか、AI検索とAIオーバービューが不得意な領域もあり
これは後ほどお伝えします。

なお私自身も、最近は「AI検索」が7割以上です。
込み入ったことを調べるのに、検索エンジンではなかなか答えに行き着かず、
むしろプロンプトを整えてChatGPTあたりに聞いてみるほうが詳しく、
知りたいことを一発で得られることがはるかに多いためです。

私が関わっている複数の企業でも、特に20代、30代世代を中心に
なかなか面白い視点で何かを分析した報告を受けることがあり、聞いてみると
「ChatGPTで調べました!」と明るい返事に戸惑っているくらいです。

生成AIを虚無化するAIオートファジー(AI Autophagy)

ここで一旦、AIのある特性に着目してしましょう。

AIは学習し推論するマシーンです。
学習すればするほど賢くなるよね?
と一般の方は想像されると思いますが、一概にそうは言えません。

物体検出の有名なアルゴリズムに「YOLO」があります。
YOLOという言葉は「You Only Look Once」という英文の頭文字からきています。
「一度見るだけで良い」という意味で、人間のように一目見ただけで物体検出ができることを指しています。

YOLOはディープラーニング(深層学習)の一モデルだとご理解ください。
学習すればするほど一発で検出できるよね?
というのがウソだという一例をご紹介します。

この図は、YOLOの学習過程で損失(誤差)がどのように変化するかの例です。

エポック25付近で損失が最小となり、それ以前・以後では損失が増加しています。
縦軸は損失の度合いで、数字が大きいほど誤差が大きいという意味。
横軸(エポック: epoch)は、学習データセット全体をモデルが1回学習(トレーニング)した回数を示します。

このグラフ形状は、学習の最適点(最適な重み)を示す典型的な例を示しています。

何を言いたいかというと:

Epoch = 1:モデルが全データを1回学習した。

Epoch = 2:2回学習した。

・・・

Epoch = 50:50回学習した。

学習を繰り返すことでモデルの予測精度が向上していきますが、
学習を続けすぎると逆に過学習(overfitting)で誤差が大きくなることを表しているのです。

この図では、ちょうど25回学習するのがベストパフォーマンスを生む、
という意味合いです。

なんとなく人間と似ていませんか?(笑)
人だと勉強し過ぎると疲れ切ってしまって、あるいは飽きてしまって
むしろ学習効果が薄くなるというような状況です。

生成AIは勉強しても疲れることはあり得ませんが、
同じことの繰り返しの学習データではアウトプットが
どんどんしょぼくなる性質があるのがわかります。

とりあえず、AIにはこのように適切に適度に学習させることが大切、
という前提を知って次の話に進みます。

AIが浸透している中で、私たちの未来について
AIが福音をもたらすという人もいれば、逆に破滅的な結末を訴える人もいます。

いずれもこの先に登場するであろうAGI(人工汎用知能)、ASI(人工超知能)が
社会に及ぼす影響を楽観視または悲観視しているわけです。

正直、私にはわかりません。
SEOは検索エンジン設計者であればコントロール可能な話ですが、
AIの進化がどう影響するか誰もが未経験であり、わかるはずがありません。

人類の発展か、あるいは衰退かの二元論ではなく
その中間のどこかに答えがありそうですが、
それも人間的にこうあって欲しいという願望に過ぎないかもしれません。

ただ、今この業界で起きている現象に着目することはできます。

それは、AIのモデル崩壊という言葉に要約されています。
2024年あたりからこの言葉を聞くようになりました。

Bloombergなどでこのモデル崩壊についても記事化されています。

モデル崩壊とは、生成AIのアウトプットとなる低品質データを再学習し続けたとき
性能は徐々に劣化していき、最終的には意味すら持たない状況に至る現象です。

先ほどYOLOの話では「過学習」という概念でしたが、こちらは
生成AIが自ら吐き出したアウトプットを、そのまま学習データとしてインプットし続けていくと
どんどんバカになっていく、という話です。

この現象は、AIオートファジー(AI Autophagy)とも呼ばれます。

一般にオートファジーとは、飢餓状態を生き抜くために自分で
自分を食べ消化することで栄養源の確保にするという
あまり愉快ではない言葉ですね。

AIオートファジーでは、自己を喰らい、自己を模倣し続けた果てに
なにが残っていくのでしょうか?

たぶん、虚無の世界です。
意味も何もない虚空の世界。

しかしここに生成AI活用のヒントが隠されています。

自分で自分のアウトプットを喰らうAIオートファジー化を避けるためには、
学習データ、入力データを良質、高品質、深い意味があるものにすることです。

ここに人間ならではの出番があると思うのです。

従来の物販アフィリエイトに代表されるキーワードを散りばめた記事は、
しょせんAIオートファジーの入力と似ていて、明るい未来は望めそうにありません。


AI検索とAIオーバービューから逃げられるか?

話を戻しましょう。

SEOアフィリエイトは完全に壊滅しないまでも、主役の座を
生成AIによる検索(+AIオーバービュー)に奪われる可能性があります。

このように感じるのは、コンピュータエンジニアとしての経験から冒頭に述べたように、
歴史的にこの手の変化は必ず欧米(ほぼアメリカ)から押し寄せ世界に影響を与えてきたからです。

インターネット、パソコン、スマホ、AI、そこに使われるソフトウェアなどすべてそうです。
Apple、Amazon、Microsoft、Google、Meta、Nvidia(AIで使うGPU開発会社)
これらの企業がどのように私たちの生活へ影響しているかは言うまでもありません。

コンピュータテクノロジーの世界は常に「黒船」はアメリカから来ました。

そのアメリカでは、AI検索(+AI Overview)でSEOが破壊的なダメージを食らっていることは
常識・前提となっていて「じゃぁどうする?」の次の議論になっています。

では逃げ道はないのか?

逃げ道とは言えませんが、AIがあえて避けている分野が存在します。
社会的にも道徳、倫理面などでもデリケートな分野です。

例えばそのひとつは「アダルト」分野ですね。

AIが技術的にできないのではなく、AIを提供している企業が存続するために
こういったジャンルにはAIが対応しないように制限を設けているからです。
この方向は企業存続のためにもしばらく変わらないでしょう。

と言っても技術の問題ではないため。裏口はどこかにあるかもしれません。
ただ法律を過失であっても無視すると処罰の対象になりかねません。

技術的には生成AIによって短い「アダルト動画」生成も可能ですが、
世に一般に広まるはずもありませんし、様々なグレーゾーンの問題も抱えます。

こういった一部のデリケートなジャンルでのSEOはまだまだ残ると考えられます。
AI検索では答えを出してくれない、答えが見つからないようなジャンルですね。
だから仕方なく(笑)、Google検索やYahoo検索に戻って探す。

またアドセンス、物販アフィリエイトに留まらずYouTuberなんかもそうですが、
プラットフォーム・広告依存型の事業継続はいつどうなるかわかりません。

Googleなどのプラットフォーマーが深刻に捉えているのが「ゼロクリック問題」です。
利用者が広告だらけのページ隙間に、本来のコンテンツが見え隠れしている状態は健全ではありませんよね?
そういった広告を間違えでもクリックしたくないがために、AI検索に流れていく人も増えていくはずでし。

思うに「ここでしか読めない」コンテンツをいかに生み出し続けるかが
結局は生き残るのだろうと思えてなりません。