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なぜコンサルファームのプロは「マウス」を使わないのか?

私がプロのコンサルファームと初めて出会ったのは、かれこれ20年以上前のことでした。

当時、某企業でのエンジニア上がりの営業マンであり、自然と法務にも通じておりました。
アメリカの某先端テクノロジー企業を買収(M&A)するかどうかを、現地のコンサルファームと
調査するというチームメンバーのひとりとして渡ったのです。

超有名なボストンコンサルティングともう一社中堅どころのコンサルファームの
協力を得ながら、経営層向けにM&AのGo/No Goを判断するための提言資料作成が目的でした。

いわゆる外資コンサルファームの仕事ぶりに驚いたのですが、
なぜかマウスを使わない!!
・・・これ、どういうことでしょうか?

また、彼らの仕事ぶりを知って以来、私自身もたくさんのメーカの
ノートPCを使ってきましたが今も複数台利用のうち、目に焼き付いた
ThinkPad(Lenovo)が欠かせません。

ついでに、Lenovoの戦略について昨年コンサルファームのひとりと会話したときの内容が
とても興味深く、コンサルタントはモノゴトをどのように考えて仕事するのか?
のご参考になるかもと思い、ここでご紹介します。

コンサルファームの仕事

コンサルと聞くと、ネットでも普通にどこでも聞くような
「〇〇のコンサルします!」
といったようなイメージを思い浮かべるかもしれません。

ここでお話するコンサルファームは全く次元の異なる
大抵は企業の大きな経営判断を支援するアウトプットを出すのが仕事です。

取引も「億」円単位で請け負うプロのコンサルティングとなります。
冒頭に述べたM&Aジャッジの提言を行うために、そのような金額で契約したのを覚えています。

M&Aターゲット企業のテクノロジー、財務、顧客、社員、風土、etc
もろもろを含めてメリット、デメリットを調査し、それを数値も使いつつ
グラフやチャート(図解)というビジュアル化したパワポにまとめ上げていく仕事です。

パワポが提言資料として選ばれるのは、日本ではさほどビジネス現場に浸透していない時代でしたが、
このコンサル業界ではすでに世界共通のユニバーサル言語として通用して、
もっとも効果的な形で「聞き手」に伝えられることが暗黙知だったからです。

コンサルファームの業界では、パワポは当然ながらも「お絵かきツール」ではありません。
パワポ=資料作成の総合格闘技ツール
という捉え方をしていました。

ワードが「文章」、エクセルは「表形式」で定番ながら
パワポはそれらが表現できる「いいとこどり」をしたうえで
いかにして第三者へメッセージを伝えるかを凝縮した「ビジュアル化」ツールです。

M&A提言資料の主役は、絶対的にパワポ。
これに付随する形で、詳細なデータがワードやエクセルでエビデンスとして用意してある、
といったイメージです。

パワポで伝えられないならば、添付したワードやエクセル資料も無意味なのです。

この提言資料では、単に調べたことの報告では済みません。
経営層にM&AのGo/No Goを決めさせるための判断材料という位置づけです。

迷わせたらダメなのです。
ハッキリとどっちなの?を含め明言しないとなりません。

だからこそ、この総合格闘技ツールを駆使して、
関係者全員がピリピリと朝から寝るまでパワポに向き合い真剣に議論していました。

いつまでマウスに縛られるんだ?

米コンサルファームは2社とも社給PCはThinkPad
当時はIBMが開発・販売を行っていましたが2004年からはレノボ(Lenovo)での製品です。

私もIThinkPadを使っていましたが、キーワードの真ん中に目立つ
赤色のボタン(=トラックポイント)がどうにも苦手です。

この写真でお分かりかと思います。

赤いボタン、なんでこんなものが?
使いずらいし、無いほうがいいのに。。。

と思いながらマウスを使っていました。

ふと見渡してみると、コンサルファームのメンバーは一人残らず
マウスを使っていないことに気づきました。

「なんでマウス使わないの?」
と聞いてみたら、呆れ顔で返事があったのを今でも覚えています。

「時間の無駄だから」

という理由でしたが、意味不明でした。

ショートカットキーを使うのはわかるけど、
それ以外ではマウスのほうが操作性がいいんじゃないの?
と思っていたのは日本勢ばかりでした。

ざくっと次のような説明でした。

  • マウスとキーボードとの往復時間:0.5秒から1秒。とりあえず1秒と仮定する。
  • 10秒に1回マウスを触るとして1分間に6回で6秒かかる。
  • 60分(1時間)では360回、つまり360秒(6分)
  • 1日に10時間くらいPCに向き合っているので60分

すなわち1日あたり約1時間はマウスとキーボードの往復をしている。
これって時間の無駄だよね?
という理屈です。

まぁ実際は、合間に食事したり、トイレ行ったり、打合せしたりで
これほどの時間にはなりませんが、言いたいことは
マウス使っていると往復運動だけで時間を結構とられる、ということです。

赤いトラックポイントを巧みに使って、ショートカットキーの合わせ技で
確かに私がマウス使っているのと比べて、格段にスムーズで速い!

速く仕事ができる、ということは仕事の量も増えてくるだけでなく、
結果的に量が質を生み出すことになるのは経験則としても理解しています。

それ以来、半強制的にトラックポイントを触ることにしたら、あら不思議!
さすがにIBMが発明しただけのことはある。
馴染むとあれほど苦手だったトラックポイントが、欠かせないくらいの存在になったのです。

ノートPCをその後、何度も買い変えましたが最終的に
PanasonicのレッツノートとLenovoのThinkPadが私の相棒です。

で、ThinkPadを販売しているLenovoですが、この会社の戦略
直接聞いたわけではないものの知人のコンサルタントと会話していて
非常に興味深く感じました。

Lenovoは世界No.1シェア~その秘密を分析してみる

今、淘汰を繰り返してきたPCメーカー各社が世界全体にどの程度シェアをもっているのか?
この点を調べてみたのが次の図です。

ご覧の通り、Lenovoが世界No.1のシェアを維持しています。
他のメーカーも家電量販店のPCコーナーでよく見かけますね。

さて、Lenovoです。

国内でThinkPadで安心感抜群だった日本IBMも、本社の米国IBMのPC事業譲渡と同時に
Lenovoに継承されています。
日本IBMの大和研究所(今はみなとみらいが主な開発場所)で鍛えられた
ThinkPadはその昔、私にとっては垂涎の的でした。

またNECは2011年にLenovoと合弁会社を作り、今ではNEC米沢工場で
ThinkPadを製造しています。

実はこの米沢産ThinkPadは、やはりジャパンプレミアムと言いますか
日本国内の高品質を担保している工場で作られていることで
もう無条件に「良い!」と思ってしまうほどです。

また2017年には富士通のPC事業もレノボ傘下に収まりました。

Lenovoは、かつてNEC vs FujistuというPC事業でのライバル関係を
両方とも手に入れたことになります。

こういった流れを買収側であるLenovo視点と、買収される側のIBM、NEC、富士通の
視点それぞれで考えてみると、やはりそこにはWin-Winの戦略が見えてきます。

買収側:PC事業の差別化は「調達力」と「元ブランドを活かす」こと

まずはLenovo側の視点で考えてみましょう。

私が抱くLenovoPCのイメージですが、
バリエーション豊富、品質は高く、かつ価格は抑えている
というものです。

同じ性能・機能でもレノボのPC価格は他社に比べ高くなく、
むしろキャンペーンも多くどちらかという少し安く買える、
という認識です。

ご存知のようにパソコンはすでにコモディティ化がすでに隅々まで行き渡っています。
部品を調達できればそれを組み立て、販売できるという意味で
世界中のどこの誰がやっても同程度のものが出来上がる商品です。

よって利益はさほどとれる商品ではなく、差別化も難しいです。

こういう状況でLenovoは「買収」を繰り返し、大きくなった企業です。

コモディティ化が進み、いかに低価格で品質の安定した部品を
大量に調達して組み立てる
どいうことが問われる世界でもあるのです。

つまり、調達力がモノを言うということ。

この点でLenovoは買収により、圧倒的な調達力を手に入れ、
PCの生産能力も手に入れました。

これだけではなく、もうひとつ重要な点があると思うのです。

それは、IBMにしろ、NECにしろ、富士通にしろ
買収後もそれぞれのブランドがもっていた強みを活かしている点です。

一般的に買収したあとは、買収される側のブランド等は消されてしまうことが多い。
しかしThinkPadという商品名も、米沢工場というアピールも、島根工場生産ということも
うま~く残しつつ、それを商品の魅力に使っていることは正直凄い。

消費者からみて魅力的なポイントをキッチリ残すという
元ブランドの良さを殺さずに逆に活かしている点です。

これはとてもうまくいっていると感じます。
私も米沢産、島根産のThinkPadであれば、ああNECや富士通の品質管理が
行き届いているはずなので安心だ、とまったく不安に感じません。

事実、米沢工場のThinkPad(米沢モデル)はこれまで一度も不調になったこともなく、
結果的にLenovoブランドに対する信頼が増している、という状況になっています。

私はLenovoの回し者ではありませんが、ホントにバリエーション豊かで、
経験から結構交渉もできるので、お勧めブランドであることに間違いありません。

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買収される側:儲かっていれば良い、ではない生き残り戦略

ではNEC、富士通にとってPC事業の売却はどのような意味があるのでしょうか?

日本を代表するIT企業でもある両社の考え方として;
単純に儲からないから事業売却する
というものでないことをご存知でしょうか。

目先のことで精一杯の中小企業ならば、
儲からないので事業を売る、という考え方は当然ありです。

しかし例えば富士通の例で言うと、空調など家電を扱うグループ会社の富士通ゼネラルを
2025年1月に給湯器大手パロマの持ち株会社、パロマ・リームホールディングス(HD)
に譲渡しました。

富士通ゼネラルは少なくとも順調に利益を出していた会社にも関わらずです。
富士通全体がITサービスにシフトしている方針の中で、ハードウェアを作り
販売する事業モデルをどんどん廃しているため、長期的視点では不要と判断したのでしょう。

長期的には不要であるならば、企業価値の高い黒字の今が売り時だと判断したのでしょう。

そうやってNECも富士通も核になる事業に注力し、それ以外のものを
削っていくという生き残り戦略の一環だと見ることができます。

というような話を、国内コンサルファームの知り合いと会話していて
なんとなく面白かったのでここでご紹介した次第です。

私が国内外のコンサルファームからOJTで教えられた
パワポ作成技術は、考え方を整理しビジュアル化する技術でもあり
今では人に教えることも多くなりました。

それを体系化してBrainで「はたらくパワポ」にまとめました。
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