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庵野秀明脚本・樋口真嗣監督のシン・ウルトラマンの評価は「誰を」ターゲット顧客にしているかが分岐点

庵野秀明監督・樋口真嗣監督といえば「シン・ゴジラ」でタッグを組んで
今回は「シン・ウルトラマン」

まぁ、どうでもいいことですけどエヴァの庵野さんの思い入れを、
樋口監督が映像化しているに違いないと・・・
この映画楽しみにしていて、走って行ってまいりました。

個人的には超絶にカッコよくて面白かったです!
ああ、これこそが見たかったウルトラマンとジーンとしたのはワケがあります。

YouTubeなんかでさわり部分のトレーラーも出てますが、
ストーリーは私の想像をはるかに凌駕してました。

ただ・・・逆にまったくうけない層もいるはず・・・
ということも映画を観てすぐにピンときました。

シン・ウルトラマンのターゲット顧客とは?

シン・ウルトラマンは・・・映画で私が感じたことは、この映画を観てもらいたい客層は
もちろん幅広い層にわたるはずですが、それ以上に明確に意識している
ターゲット顧客というものがあるに違いないということです。

そのターゲット顧客とは・・・

原作ウルトラマンのファン層です。

この層をめちゃめちゃ意識していることがわかりました。
かくいう私自身が原作ウルトラマンの大ファンにほかならないからです。

そこを意識している根拠というか、シーンなどをこの後説明するとして、
逆に原作ウルトラマンを知らない人、興味ない人にとって
凝りに凝った細かい演出におそらく気づくことが無いだろうと思います。

なぜなら、その前提知識が無いからです。
では前提知識のある人とは?

1966年7月から1967年4月までの
ウルトラマンのテレビ放映にかじりついていた人です。

ウルトラマンの前には「ウルトラQ」
ウルトラマンの後には「ウルトラセブン」

その後、ウルトラマンにも
「帰ってきたウルトラマン」
「ウルトラマン太郎」
と派生バージョンはあるにせよ、原作ウルトラマンは
いわば「元祖」にして「原点」です。

元祖ウルトラマンと、シン・ウルトラマン。
まず、ある所作がシン・ウルトラマンではデフォルメされていることに気づきます。

例えば・・
腕を十字にクロスして、縦に構えた右手から発射される
スペシウム光線

あれは原作ではウルトラマンの必殺技のひとつ。

原作ウルトラマンでは、この腕をクロスする動作は
右腕を縦に、そこに左腕を添えるのがほぼ同時。

ところが、シン・ウルトラマンでは右腕を縦にして
そこに左腕をビシっと添える動作がまぁなんというか・・・
そこだけすごく目立つというか、またある意味とてもカッコいい。

この演出には痺れました!
ああ、このたたずまいはなんなんだ・・・美しすぎると(笑)

ただし・・・

原作ウルトラマンをご存知なく、このシン・ウルトラマンが
初めてのウルトラマン体験ならばそのクロスするモーションの
微妙な「あや」に気づくわけがない。

気づいて喜んでいるのは、往年のファンだけ。
というように、ある種「内輪受け」の映画だと直感したのです。

原作へのリスペクトを随所にちりばめて、
古くからの世代のファンをドキドキワクワクさせてくれるのですが
それを面白がれるかどうかだと思います。

とは言っても興行的には内輪受けのみ狙ったのでは話にならないと思います。
その点では広い世代にわかりやすくウルトラマンのエッセンスを
うまく引っ張り出したとも言えます。


なんにせよ庵野さん独自の世界観を打ち出した作品です。
樋口監督は庵野秀明さんの思いをとにかく必死に採り入れたんだろうなと。

シン・ウルトラマンで無くなったものとは

原作ウルトラマン時代は言うまでもなく、
CGもVFXもありません。

つまり原作ウルトラマンは、人が入って動き回る早い話が
ぬいぐるみ、とも言えます。
戦う怪獣も同様に人が入ってます(笑)

シン・ウルトラマンでは怪獣は巨大不明生物
禍威獣(カイジュウ)という呼称が変わり、ガボラやネロンガ
といった古いファンなら知っているお馴染みの怪獣がCG制作されています。

さて、人が入っててCGもVFXも使えないが
特撮で頑張った円谷プロダクションですが、
シン・ウルトラマンでは原作ウルトラマンにあったものがいくつか消えています。

  • カラータイマー
  • 目の下にあった覗き穴
  • 背中のファスナー

順番に説明します。

カラータイマーとは、ちょうどみぞおちの上あたりにあったランプ、発行体。

通常は「白」ですが、時間の経過とともに
「ピコン!ピコン!ピコン!」と警告音とともに「赤」になります。

原作ウルトラマンでは、M78星雲から来たウルトラマンは
地球上での活動は3分と限られていました。

その3分のタイムアウトが近くなってくるとカラータイマーが
白から赤へ点滅と警告音を出す仕掛けです。

なぜそんなものついてるの?

と聞かれてもわかるわけありませんが、
番組制作側にはそれなりの事情があったことを聞き知っています。

そのひとつは、ウルトラマンが弱っている状態を伝えたかったことと、
次に当時は白黒テレビとカラーテレビが混在していた時代でもあり、
そのあたりでわかりやすく伝える手段としてこのようになったそうです。

それで・・・シン・ウルトラマンではこのカラータイマーが無いですね。

無いためにスッキリした体形で、且つ3分という時間の制約から解放されたのだと
・・・古いファンならきっとすぐわかります。

次に、目の下にあった覗き穴

これなんのことかというと、ぬいぐるみでCGではなく
「人が入っている」ウルトラマンであり、怪獣と戦うわけですので
視界ゼロで暴れまわることはできません。

そのために両目の下に、切り欠きがあって
そこが覗き穴だったわけですけど、俳優さんも大変だったと思います。

うっすらと空いた隙間から何とか外部を見ているという状態ですし、
現代の映画ではこんなこと考えられませんが、
当然ながらその覗き穴は無くなりました。

最後に、背中のファスナー
といっても原作ウルトラマンでも目立つものでは決してなく、
そこのところは当時の知恵がいろいろあったと想像できます。

シン・ウルトラマンでは当然ながら背中のファスナーなんてありません。
逆に、もしあったらそれはそれで不思議になりますけどね。

MARVELでなくて良かったと思った

シン・ウルトラマン。
これがハリウッド映画ではなくて良かったとも感じました。

これはアベンジャーズやアイアンマン、ドクターストレンジ風になっていたら
まるで違ったものであり、シン・ウルトラマンと呼ぶべきもとは異質のものだったでしょう。

和も風、日本独特の映画・・・
というよりも庵野秀明x樋口真嗣という組み合わせでしか生まれない映画です。

ウルトラマンなのに、なぜかヱヴァンゲリヲンの味付けと演出を
感じたのはきっと私だけではないはずです。

そこにはエヴァの世界観が・・・特に最後の戦いではそのままに感じました。

なつかしさと
斬新さ
そして深掘り

シン・ウルトラマンにはそれがありました。

も一回、観に行くつもりです(笑)