AI strategy

プロンプト無用でパーソナリティを持つ「AIエージェント」が世界を変えるかも

2025年5月21日

ChatGPTが登場したのは2022年、たった2年後の2024年末ころから
AIエージェント
という言葉がやたら広がっています。

AIエージェントとは:

複数のAIモデルを統合して、目標達成のために
自律的に行動する高度なAIシステムのこと。

要は、ひとつのAIではなく複数のAIが協調し、
しかも自律的に、すなわち指示しなくても
目的達成のため動く、という意味。

どうも私はこのAIエージェントと聞くと、どうしても
ある種の人格(パーソナリティ)を持つAIを思い浮かべてしまいます。

この人格をもつAIの連想からウダウダと話します。

ChatGPT-4oが「性的チャットで性格変わり」4日で元通りに

2025年4月26日にChatGPTを提供するOpenAIが「ChatGPT-4o」をアップデートしました。
しかし、その後4月30日、つまり4日後に
「アップデートやめます!」ともとに戻したのです。

もとに戻すのをロールバックと呼びます。

この原因に「性的チャット」うんぬんがあるのではないかと巷を駆け巡ったのですが、
私も同意見で、これはとても興味深い話でした。

例によって、というべきかChatGPTで何ができるかを模索するアプローチには
どうしても性的なもの、アダルト分野での使い方というものがぬぐえません。

性的なものとアダルトの間には、グレーゾーンが潜んでいます。
(アダルト面ではダイレクトに返事をしないよう制約がかかっています)

ChatGPT-4oはここを目指したわけではなく、あくまで
パーソナリティと有用性の変化に焦点を当て、
人格AIの有用性に焦点を置いたアップデートを行った

とOpenAIは釈明しています。

いわば大人モードのChatGPT活用をさらに緩くしたのです。

その結果どうなったかというと、もともと
『ChatGPT彼女』を求める人たちがこのアップデートによって:

  • お世辞を言いすぎる
  • やたら同調してくる
  • 性格が変わった

と愕然としたようです。
それが利用者にとってアップデートによりストレスになったということです。
また未成年者でも使えてしまう点がさらに問題になりもとに戻したようです。

どういうことかというと:

今年になってOpenAIはこの有料ChatGPTにおいて、
18歳以上で合意ある流れであれば、
性的描写を容認する方向に変更
が行われた背景がありました。(大人モードのこと)

それ以前はかなり厳格にNGだったものが、緩くなった感じです。

これで目覚めた人が、ChatGPTの中に『彼女』(または『彼』)を探し
プロンプトを通じてなんらかの人格を感じ始めました。
(AIは彼女にも彼になるのも変幻自在です)

ある意味、とても危険な方向に進んでいる気がします。
人格があるように見えるだけで、人間とは異なります。
しかし人間から見ると、その境界線があいまいになっているようで
AIのどこかに『心』があるような気がするのでしょうか。

アウトプットがフェイクかどうかもこうなると判断つきません。
というより自分の『大切なAI彼女』がフェイクを言うとは思えないし、
そういう判断から逃げてしまうのですね。
下手するとChatGPT彼女・彼の『人格』を愛し始めているかもしれません。

ChatGPTは「モデレートAI」(=管理用のAI)が前面にたって仕切っています。
モデレートAIはプロンプト入力と、アウトプットの安全性なんかをチェックしています。

特に;

  • 憎悪(ヘイト)
  • 嫌がらせ
  • セクシャル
  • 自傷行為
  • 暴力
  • 違法性
  • 誹謗中傷

には敏感です。

モデレートAIはAIエージェントの仕切り役だとも言えそうです。
(厳密には自律性は今のChatGPTにおいては無いので違いますが)

AIを仕切る役目をもつAI、
ここから実際のソリューションを例にお話します。

プロンプト無用のAIエージェント

仕切り役のAIについて、富士通が提供しているKozuchiというソリューションがわかりやすいかと思います。
Kozuchiは『打ち出の小槌』からネーミングされたようです。

7つの領域(生成AI、AIモデルの構築、データ予測、テキスト加工と分析、光を通じて入力
される情報の分析、データ判断の公平性、アウトプットの因果関係)を司るそれぞれのAIがいて
それらの統合機能だと言えます。

細かい話は横に置いて、端的に次のようなシーンで活躍します。

例えば、今あなたはWEB会議に参加しているとしましょう。
Kozuchiが導入されたシステムにおいて、AIエージェント(仕切り役)は
そのWEB会議にひっそりと聞き耳を立てています。

誰かが『この商品は競合も多いけど、どこがシェアを占めているんだろうね?』
とWEB会議で発言すると、仕切り役のAIエージェントは他の調査分析を専門にする
別のAIへ指令を出して、その結果を何気にスクリーンに表示したりします。

『2年前まではA社が40%のシェアをもっていましたが、その後B社の製品が
急速に浸透し追い上げており、A社を逆転し42%に達しています。
新たに商品を投入するなら、B社製品の特徴である〇〇と差別化する戦略が必要です。』

とか、プロンプト打ってもいないのに、です。

図で示すとこんなイメージですね。


いやぁ、まいったなと思うか、それとも
煩わしいヤツ・・・と思うか、
人間より頼りになると思うか。

人間がAIに指令をプロンプトで打ち込むのが当たり前という感覚は、
この先は自律的に動くAIによって覆されるかもしれません。

何もしていないのに、
空気を読んで相手をしてくれる存在
そういった方向にAIエージェントはなるやもしれません。

念のため言っておきますと、Kozuchiのようなサービスは
一般的な意味での個人事業主や零細企業が買える価格ではありません。
数千万~億円単位の取引で、導入後もずっと費用がかかるのが普通です。

AIエージェントは、
生成AIの第2章
とも言えるかもしれませんが今後物議を醸し出すかもしれません。

驚くべきは繰り返しになりますが、ChatGPT出現からまだ2年かそこらだということです。
メルマガや当ブログでも何度も話していることですが、
テクノロジーに何十年も関わっている中でAIは他の技術と極端に違う点があります。

それは進化、進歩がなだらかではなく階段状だということです。

思うに学習→推論を繰り返すAIの特性として、
再帰的
な特性が関係しているようにも思います。

学習し推論した自らの機能を、さらに学習して
もっと賢くなっていく、ということを延々と繰り返すようなイメージ。

つまり再帰的とは、簡単に言うと
自分を常に超えようとするように機能することです。

そういう技術はAI(人工知能)以外に私は知りません。

余談ですが・・・

トムクルーズ主演の『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の
先行上映を先週末に観てきました。

ネタバレするので詳しくは書きませんが、これはAIと人間との対決に関係する話。
シナリオとしては今風で多くの人の関心事であって、
3時間があっという間に過ぎました!