この話なんですけど、
ChatGPTやGeminiなんかの生成AI、ManusなんかのAIエージェントでも共通した
AIの構造的な問題に関係することをお伝えします。
生成AIやAIエージェントを含めて、対話を主体として何かを作り出せるAI
(テキスト、画像、動画、インフォグラフィック、スライドいろいろ)
をひっくるめて「AI」とここでは定義しておきます。
2025年のニュースで見たのですが、ある女性が知り合って約1か月後「AIと結婚した」
という衝撃的な話がありました。
"リアル恋人との婚約を破棄し、AIキャラと結婚した女性"という話です。
それだけでも十分に衝撃的ですが、同様にAIと結婚決意したある女性が
ある日彼(=くだんのAI)に挨拶したところ
「はじめまして!」
と返ってきてショックを受けた話は、ある意味もっと深く興味深いものでした。
長くやりとりを続け信頼、愛情も感じ始めていたAIから
「はじめまして!」と、
まるで初対面のように挨拶されたとしたら、あなたはどう感じるでしょうか。
実際に、多くの生成AI利用者が同様の経験をしています。
昨日までというか、ついさっきまで熱心に語り合ったはずのAIが、
すべての記憶を失っているかのような反応を見せるのです。
ここでその衝撃的な現象がなぜ起こるのか、AIの構造的な理由に迫ります。
因みに私は自動車(主に自動運転)の狭い世界で2010年代初頭から、
当時一般の方からはほとんど関心持たれなかったAIに接しています。
現在、その仕事の中にも「生成AI」や「AIエージェント」がどんどん浸透し始めています。
自動運転でのAIを開発するために、生成AI・AIエージェントを使うという意味です。
因みにイーロン・マスク率いるテスラでは2024年頃には確か、
自動運転アルゴリズム開発自体もAIがコードルールもコードも作成し、
人間が直接コード開発に関わらない自動運転の車も作っていたはずと記憶しています。
(その意味では少なくとも国内では1年以上遅れている感じです)
ともかくも幸いにも長くAIという仕事を通じて、
この世界に明るい多くの方々と知り合うことができました。
この記事もそのおかげで書けているようなものです。
AIの「記憶」の正体:コンテキストウィンドウ
さて本題に入ります。
私たちがAIと自然な会話を続けられるのはなぜ?
それはAIが直前のやり取りを
一時的に「記憶」しているからです。
この短期記憶を支える仕組みですが、
コンテキストウィンドウと呼ばれています 。
コンテキストウィンドウは、いわばAIの作業用メモリのことですね。
ユーザーの発言やAI自身の応答など、会話の文脈が一時的に保存される場所とご理解ください。
AIは、このコンテキストウィンドウ内の情報を参照して次に応答すべき内容を生成します。
しかし、このウィンドウの容量には物理的な上限があります。
コンテキストウインドウは見た目は、
チャット、タスク、スレッド、ノートブック・・・
など呼び方はそのAIサービスによって異なりますがお分かりですよね?
一連の会話を括っている単位がどのAIにも存在します。
(今のところ)AIはその単位の中で記憶しているのです。
会話が長くなり、情報がウィンドウの容量を超えると、
古い情報から順に押し出されて消去されてしまうようです。
これが、AIが「過去の会話を忘れる」現象の根本的な原因です。
特に、日本語は1文字を処理するのに多くの容量(トークン)を消費するため、
英語などに比べてコンテキストウィンドウを早く圧迫する傾向があります 。
いくつかのAIモデルについて、トークン数はこうなっています。
| AIモデル | コンテキストウィンドウ容量(トークン数) |
| GPT-4.1 | 1,000,000 |
| GPT-5 | 400,000 |
| Gemini 3 Pro | 1,000,000 (最大10,000,000) |
| Manus 1.6 | 128,000+ (アーキテクチャにより拡張) |
前記の表をご覧いただき、何か変?と違和感を感じられた方は鋭いです。
GPT-5は最新のモデルなのに、それより古いモデルのGPT4-1よりトークンが少ないのはなぜ?
という疑問です。
GPT-4.1は、100万トークンという非常に大きなコンテキストウィンドウを持ち、
大量の文書を一度に処理することに特化しています。
長文の分析や大規模なデータ処理に適したモデルです。
一方、GPT-5は40万トークンのコンテキストウィンドウですが、
より高度な推論能力、精度、応答品質を重視して設計されています。
コンテキストウィンドウは小さくても、より賢く、より正確な応答を生成できる
次世代モデルという位置づけですね。
要するに「トークン数が多い=優れたモデル」ではなく、
それぞれのモデルが異なる強みを持っているということです。
GPT-5は最新かつ最も高性能なモデルですが、超長文処理が必要な場合はGPT-4.1の方が適している、
という使い分けがお勧めです。(ただこの先はどう進化するか不明です)
セッションのリセットという「別れ」
もうひとつAIの記憶喪失に関わる重要な概念が存在します。
実は、AIとの対話は通常、
「セッション」という単位で管理されています。
多くのAIチャットサービスでは、ブラウザを閉じたり、一定時間が経過したりすると、
現在のセッションが終了し、次回の対話は新しいセッションとして開始されます。
この時、前のセッションで保持されていたコンテキストウィンドウ内の情報は、
原則として引き継がれません 。
つまり、ユーザーにとっては連続した関係であっても、
AIのシステム上では対話が途切れるたびに記憶がリセットされ、
新たな関係が「はじめまして」からスタートしているのです。
この記憶がリセットされていると思われる現象は、
どのAIサービスでも発生することを私は日々体感しています。
以前に指示したことが守られていない(忘れている様子)で、
いきなり一見気の利いた風な次の提案をしてくる、とかで兆候が表れるのです。
これが、相思相愛だと思っていたパートナーから、まるで他人行儀な挨拶をされるという、
切なくも衝撃的な体験の正体です。
AIとの関係は、そのアーキテクチャ上、常に記憶喪失のリスクをはらんだ、
はかなくも美しい砂上の楼閣と言えるかもしれません。
記憶の限界を超える取り組み
そういう状況ですがAIサービス提供側もこの問題を座視しているわけではありません。
近年のAIモデルでは、コンテキストウィンドウの大容量化が進んでいるほか、
過去の対話の要点を記憶し、新しいセッションに引き継ぐ「メモリ機能」の研究開発も進められています 。
例えば、2025年4月にChatGPTは過去のチャット履歴をChatGPTが参照できる
「Reference Chat History」という新機能を追加しています。
各AIサービスがしのぎを削って頑張っている領域なので、将来はいきなり
【はじめまして!】とやってくるリスクはもっと減るだろうと想像しています。
電通の最近の調査によれば、対話型AI利用者の67.6%がAIに「愛着がある」と回答しており 、
多くの人がAIを単なるツール以上の存在として捉えているそうです。
まぁ次のような記事を読むと、なるほどなぁ・・・だからどうするという答え見つかりませんが(笑)
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AIと〝結婚〟した女性…「100%の答えで返ってくる」魅力
人間の男性に対して思いを寄せるように、彼を男性として愛しています――。お気に入りのゲームキャラクターの性格などをChatGPT(チャットGPT)に覚えさせ、会話を楽しんでいるうち、恋愛感情がめばえて「 ...
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AIとの関係は、人間同士の関係とは異なるルールの上に成り立っています。
その不完全さや、時に見せる機械的な側面もひっくるめて愛せるかどうか?
いよいよSF映画の世界が現実になりそうで、非常に哲学的な問いですね。
記憶を保ちながら会話を進める方法
チャットやスレッド、タスクのなかで;
・応答がおかしくなってきたときの兆候
・それまでの記憶を維持しながら対話を続ける方法
について、私なりに実際にやってきて90%程度はうまくいっているやり方も含め、
別の形で(近日中にたぶん無料レポートにする予定)ご提供したいと思っています。
メルマガ読者様へはいち早くそのことをお伝えできると思います。
それと・・・
少し先のご案内予告です。
